DAISY

花畑

マルチメディアDAISY図書の編集

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マルチメディアDAISY図書の編集

・ 原本をどこまで再現するか
・ スキャナー読み取り
・ 画像編集
・ HTMLファイルの編集
・ 絵巻物型か紙芝居型か
・ iPad対応
・ ファイル名やフォルダー名の付け方
・ フォントサイズ・文字サイズ・行間隔
・ 余白(margin・padding)
・ ハイライトの長さ(spanの間隔)
・ タイトルと見出し
・ 奥付(著者紹介や資料・解説など)
・ ページ番号
・ Sigtuna変換
・ ナレーションの録音
・ DAISY Validator
■ナレーションの録音と編集


マルチメディアDAISY図書は、何らかの学習障害があって、読書がしにくい人のための図書です。どのような学習障害があるかはそれぞれ異なります。個々の障害者に合わせて制作できるのもマルチメディアDAISYの特徴なので、文字や画像の大きさ、ハイライトさせる文章の長さや再生機器の種類や性能など利用者や利用目的を考慮して制作しなければなりません。

このガイドラインは、児童用の絵本をマルチメディアDAISYにして、普通のノートパソコンかデスクトップパソコンを用いてAMISで再生する場合およびiPadなどのタブレットで再生する場合を想定しています。

マルチメディアDAISY図書の編集は基本的には簡単です。しかし、再生ソフトへの対応や縦書きへの対応など奥が深いともいえます。 以前はグループメンバーの作業向けに、HTMLプログラミングやスタイルシート,実際の編集方法なども具体的に記載していましたが、PCだけではなくタブレットが利用されるようになり、タブレット用再生ソフトへの対応のため頻繁に改訂しなければならなくなったのでホームページへの掲載はやめ、メンバーにはマニュアルファイルを配布するようにしました。それも頻繁に改訂するので顰蹙をかっています。

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原本をどこまで再現するか

マルチメディアDAISYと紙印刷の絵本との決定的な違いは「再流し込み」といって、画面の大きさにしたがって、テキストが流し込まれ、スクリーンから外れることはありません。したがって原本のレイアウトは保持されず、パソコンあるいは再生機の画面の大きさ・解像度によりレイアウトが変動します。更に読むとき文字を拡大すると、画面幅にしたがって1行文字数が変化します。

原本にしたがって改行すると、その改行前で勝手に改行されたりして改行が乱れ、読みにくくなることがあります。したがって、段落は原本に従うが、改行は、内容によっては無視します。絵本では改行が多用されることが多いので悩まされます。
背景色は設定するとAMISで変更できなくなるので原則つけません。
できるかぎり画像と文字は重ねないようにします。つまり背景画像の使用は避けます。

わが国の絵本にはページが縦長のものが多く、横長のパソコン画面との相性が良くないので、レイアウトで工夫が必要です。絵本は、やはり「絵」の魅力を大切にしなければなりません。しかし、パソコン画面の制約で、元の画像をどの大きさに縮小するか工夫が必要です。また、わが国の絵本では、文字と画像を重ねている場合が多いのでその処理をどうするか、絵本のDAISY化には工夫しなければならない課題が山積しています。結局、原本を尊重しつつ「新しい絵本を制作する」ことになります。

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スキャナー読み取り

まず最初の過程がスキャナーによる絵本の読み取りです。絵本の場合、両面見開き画像が多いので、その場合は本を注意深く分解してスキャンします。分解しないでスキャンすると中央部の陰の部分の処理に手間がかかるうえ、画像の仕上がりが不自然になりがちです。また、特に日本の絵本では、画像と文章を重ねている場合も多いので、画像編集の工夫が必要です。また、あとでの修正や書誌情報の書き込みのため表紙から裏表紙まですべてスキャンして編集前原図として保存しておくこと、原稿をスキャナーの枠と正確に平行に置いて、画像の回転を避けること、裏側に黒い紙をあてて裏面の文字や画像が透けて写らないようにすること、複写機の縁に絵本を当てると数mmスキャンされないことがあるので注意することなどが必要です。

画像データから文章をOCRで読み取りテキストファイルにして校正します。 OCRは、「ペ」と「べ」、「口」(漢字のくち)と「ロ」(カタカナのロ)、「一」(いち)と「ー」(のばしぼう)、「つ」と「っ」、「1」(いち)と「l」(エル)など読みとりミスしやすい文字があります。読み取ったテキストを18ポイントぐらいに拡大して注意深く校正することが必要です。ここを手抜きすると後が面倒です。

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画像編集

写真編集にはPhotoshopElement便利です。

画像編集は縮小前の大きな画像で行い、編集原図として保存します。縮小してからは画像処理すると画質が低下します。また、いったん縮小した画像は拡大すると画質が低下します。編集原図を大切に。

 DAISYに入れる画像は大きすぎず小さすぎないように。標準は400ピクセルx400ピクセル以内だが高分解能ディスプレイの利用者のために大小いくつかの異なる画像サイズのバージョンを用意することもあります。
横幅800ピクセルx縦幅500ピクセル程度では普通のパソコン画面に表示できるが文字が入らなくなるので注意。
iPad縦置き再生のためには横幅720ピクセルに調整します。 原則、画像にはspanタグをつけません。

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HTMLファイルの編集

CrescentEveなどのHTMLエディターを使って、テキストファイルに画像を配置してhtmlファイルを作成します。エラーの許されない最も重要なプロセスです。エラーを教えてくれるCrescentEveの使用は必須。ルビタグはSigtuna変換後に入れます。ルビタグはエラーと表示されチェックされないので間違えないよう要注意。

・ 絵巻物型か紙芝居型か

1冊の絵本を1つのファイルに入れるのを「絵巻物型」、ページ毎にファイルを分割して、1ページ1ファイル、あるいは見開き2ページを1ファイルに設定するのを「紙芝居型」と名付けています。場合によっては1ページを2ファイル以上に分割して、テキストを4〜5行に抑え、なるべくスクリーン内に1ページがおさまり、スクロールしないでもみられるようにします。文字だけのページはつまらないので、同じ絵を次のページに出すこともできます。ページの最後に画像があると、全体が表示されないままに次のページに移ることがあるので、画像の後ろにも文字が入るように工夫します。あるいは、表示されず読み上げもされない無音のspanの文字を入れます。

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iPad対応

最近、iPad型のタブレット型端末がめざましく普及し、マルチメディアDAISY図書の再生には、Voice Of DAISY(VOD)と「いーリーダー(eR)」という有償ソフトがあります。パソコンとは比較にならないぐらい便利です。いずれ教育現場にタブレット型端末が導入されれば、DAISYの再生もタブレット型が主流になることに疑いがありません。

VODもeRも縦書き、ルビにも対応できるように改訂され、きわめて利用しやすくなりました。ただ、まだページめくり機能や、本棚の並び替え機能がありませんしルビのあるテキストがふらついたり使い勝手には課題があります。ページを分割して編集されている場合は、ページをジャンプしようとすると目次に戻るか矢印カーソルをタップしなければなりません。iPadの特徴ともいえるフリック(画面を指でこする)でページ移動できるようにするにはページ分割せず、1枚のページにまとめなければなりません。AMISやEasyReaderなどのパソコンとVODやeR(iPad)の両方に適したファイルの編集はかなり難問です。また、VODとeRの開発ポリシーはかなり異なります。

ファイルを分割したままでもタブレットで再生できます。タブレットで便利なフリック(指操作)でページ移動できるようにするにはファイルをページ毎に分割せず、すべてのページを1つのページに入れます。分割されたファイルを一つにまとめることは可能です。また、一つにまとめることをあらかじめ想定して分割(紙芝居型)ファイルを制作しておくと便利です。

ただし、、iPad-VODもeRもHTMLの文法に厳しく、文法に誤りがあると、AMISやEasyReaderで再生できてもiPad-VOD-eRではエラーと表示されることがあります。軽微なエラーの場合でも、スクリーンをズーム拡大・縮小しようとするとエラー表示が出て拡大・縮小できません。HTML-LINTによる文法チェックは必須です。

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ファイル名やフォルダー名の付け方

制作途上では安全のために頻繁にバックアップ保存するのでファイルやフォルダーが迷子にならないよう要注意。不要なファイルやフォルダーはさっさとゴミ箱へ。ただし、ゴミ箱のクリーニングは制作が一段落してから。
ファイル名やフォルダー名はわかりやすくかつ単純に。他の人が見ても理解できればさらに良い。たとえば画像フォルダー名は**imgとつければ誰が見てもわかる。自動的に順番に並べるにはファイル名に番号を入れます。ページ番号(あるいはファイル番号)と画像の番号を同じにしておくことが必須。数字から始まるファイル名は望ましくないことがあるので注意。たとえば、絵本「かにむかし」のフォルダー名は「kani」、サルが出てくる6ページ目のファイル名は「kani06.html」、画像ファイル名は「kani06.jpg」にしておく。番号は00ではなく01からスタートが便利。制作途上は、プロジェクトフォルダー名を「kanihtml-161217」「kanidaisy-161217」などとして、ファイルの種類や制作年月日を入れてわかりやすくしておきます。最近のパソコンの性能は高いので、フォルダー名は長くてもほとんど問題ありません。最終的なhtmlファイルと、録音前のDAISYファイルはバックアップ保存しておきます。

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フォントサイズ、文字サイズ、行間隔

serifのついている明朝体や教科書体は識字障害のある人には認識しにくいという研究結果があるそうです。フォントはMS Pゴシック",sans-serifと設定し、文字サイズは原則 120%、行間隔は150%以上とします。

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余白(margin・padding)

領域の外側の余白(marigin)や内側余白(padding)の大きさは em や px、%などで指定します。emは文字の大きさですから、2.0emは2文字分の幅になります。emで設定すると、利用者が文字の大きさを変えると余白の幅も変化します。無意味な余白の拡大をなくすには、emではなく、px(ピクセル)や%で指定します。ただし、スクリーンの大きさを最大限有効利用するため、余白の設定は必要最小限にします。eRではCSSのすべての数値が無視されます。

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ハイライトの長さ(spanの間隔)

絵本のレベル、子供が自分で読むのか、読んでもらうのかによってハイライト(span)の長さは異なるので設定は重要です。原本絵本の改行とは無関係。あとで修正するのは面倒なので注意が必要。
spanの位置は原則句読点「、」「。」区切りとし、区切りが2行以上に長くなる場合は、一行半を目処に意味の区切りで分けます。幼児用の絵本や教科書は分かち書きされているので、レベルによっては分かち書き単位でハイライトをつけます。絵本によっては句読点が全くないもの、句点のみのものなどいろいろあります。ハイライトは長すぎるよりは短い方が望ましい。ちなみに、一字ごとにハイライトさせて欲しいとの要望さえあります。AMIS再生ではハイライトでは音声が切れている必要がありますが、iPad(VOD)では音声は連続していてかまいません。

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タイトルと見出し

 h1〜h6の見出しはncc領域にもくじとして表示されページジャンプに利用されます。ただし、主画面に表示させないでncc領域だけに表示させたり、主画面に表示させハイライト設定する際にはやや複雑な設定が必要です。
 最初のh1には本のタイトルを記入します。ここに<span>を入れるとncc領域に表示されなくなるので注意。また、AMISで再生するとき、タイトルが自動的に中央部に表示されるよう(おせっかいにも)あらかじめ設定されていますので、タイトル位置を変えるにはCSSでの設定が必要です。また、自動的にハイライト表示されますが、奇妙にもハイライトの長さがタイトルの長さに無関係に、主画面全幅がハイライトされます。
 したがってh1をCSSでdisplay:noneに設定し、h1の他に.titleのクラス指定でタイトルを表示させ<span>設定します。h1には<span>を入れません。すると主画面には.title設定のタイトルが表示され、文字幅だけがハイライトされます。ncc領域にはh1設定のタイトルが表示されます。ただし、絵巻物型にdisplay:none設定するとiPad-VOD再生では不具合を起こします。
 絵本には見出しがない場合が多いので、ページ番号か適当な見出しをh2に設定してncc領域だけに表示させます。この場合も主画面に表示させないようCSSでdisplay:none設定します。
 2番目に出てくるh1やh2以下はncc領域に表示され、自動的にハイライトされます。ただ、<span>設定しないと主画面の全幅がハイライトされてしまいますので<span>設定が必要です。主画面に表示させないときはCSSでdisplay:none設定します。

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奥付(著者紹介や資料・解説など)

絵本の奥付は子どもたちは見ませんので、本文とは別のレイアウトで編集します。ただし、タブレットで絵巻物型の場合は本文とつなげて編集します。さもないと、奥付からフリックで本文に戻れなくなります。本文縦書き、奥付横書きの場合は分離しなければならないのでフリックでは戻れません。。

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ページ番号

ページタグを使ってページ番号をつける場合は、見出しの前につけることはできないので前のページの最後のbodyの前に、次のページの番号をつけ、録音するときは無音をいれます。 ただし、IE8で製作する場合、ページタグを使うと図書が壊れてしまうことがあるので入れないこと。絵本では必要がないかかえってじゃまになることがあります。

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Sigtuna変換

HTMLファイルが出来上がれば、次にSigtunaでDAISY変換して音声ファイルとテキストをシンクロさせるためのsmilファイルを導入します。このときHTMLプログラムに(少しでも)誤りがあればerror表示が出て変換できません。初心者にはここが最大の難関です。Sigtunaでもどのファイルに誤りがあるか示されますが、そこからファイルの中のミスを捜しだすのはたいへんな作業です。

HTMLエディターのCrescentEveを使えば、エラーチェックできるので必須。 CrescentEveを使わないときのHTMLファイルのミスの検出にはHTML-チェックサイトを使います。Web上でファイル毎にチェックし、どこの行にどのような誤りがあるか即座に示してくれます。オリジナルは英語版ですが類似した日本語版で十分です。

以下のサイトからリンクできます
Another HTML-lint

スタイルシート(CSS)をチェックしてくれるサイトは、 CSS Validator

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ナレーションの録音

テキストとシンクロさせて音声を吹き込みます。 音訳者とパソコン操作者が別の場合でも、一緒に作業するのが効率的です。読み間違えがあった場合は、何度でも読み直してそのまま録音し、あとで編集します。 あとで修正再録音すると、録音レベルや音質が変わることが多いので要注意。

WAV

ナレーションを別の場所で録音してインポートすることも可能です(ただし録音ファイル形式が一致していることが必要)。もっともしやすい方法を選択します。ただ、いろいろな原因からくるノイズに注意。ナレーションの録音と編集については別記します。


DAISY Validator

Another HTML link gatewayはHTMLファイルしかチェックしませんが、DAISY構成全体をチェックするのがDAISY Validatorです。Another HTML link gatewayで満点ならValidatorチェックでのエラーはかなり少なくなります。 ただ、HTMLファイルが完全でも、Sigtuna変換によってエラーが多く発生すると思われます。critical errorやnoncritical errorは極力修正しておきたいが実際はほとんど不可能。英語のDAISYはerrorが少ないので、日本語対応DSigtunaに問題があるらしい。有償のエディターで編集したDAISYにはvalidateできないものがあります。DAISY Validatorは以下のサイトからダウンロードできます。
DAISY2.02Validator

グループメンバー用には詳細な編集マニュアルを準備しています。

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