ナレーションの録音と編集
・ 準備
・ ノイズ対策
・ Audacityによるノイズ除去
・ SoundEngineFreeによるノイズ除去
・ ナレーション録音の工夫
・ ICレコーダーの利用
・ 使用している録音機材
■マルチメディアDAISY図書の編集
DAISYのナレーションはきわめて大切です。AMIS再生の場合の音声編集のためにはハイライトの閉じ位置で言葉をはっきり切らなければならないので、普通の朗読とはかなり異なります。ハイライトの長さ、すなわちspanの間隔は本によって、あるいは利用者によって異なります。句点(。)で切るだけなら問題ありませんが、読点(、)でも切る、あるいは「わかちがき」でも切るなどいろいろな場合があります。利用者によっては、一字ごとにハイライトさせて欲しいとの要望さえあります。iPad-VOD再生の場合はハイライトで音声は切れませんので朗読の自由度ははるかに高くなります。
1)シナリオを準備すること。つまり、テキストあるいはそのコピーに、ハイライトのspanの閉じ位置を書き込み、あらかじめ読んでいただくこと。
2)読み上げ原稿にはOCRスキャン原稿を用いず、原本か原本コピーを使うこと。OCRスキャン原稿にはしばしば誤りがあり、再録音の原因になりがちです。
3)制作意図やイメージをあらかじめ伝えておくこと。
4)本録音の前にリハーサルして、制作意図やイメージ、録音機材の調整を確認すること。
5)ゆっくり、はっきり読んでいただくこと。声が大きすぎるとデジタル録音ではパチンというノイズになります。といって低すぎるとSigtunaでは音量拡大や縮小ができません。サウンド編集ソフトで拡大するとノイズレベルも高くなってしまいます。音量は高すぎないよう高めにが条件です。
6)span位置での音声の区切り(間の取り方)や、イントネーションなどに問題がありそうなときは遠慮せず何度でも読み直していただく。後日、再録音ではもっと迷惑です。
7)特に、分かち書き読みの場合、AMIS再生用には、分かち書きで音声が確実に切れ、しかも不自然に間延びしないよう読んでいただかねばなりません。至難の業です。iPad-VOD再生の場合はハイライトで音声は切れませんので朗読ははるかにしやすくなります。
8)1ページごとに録音を再生して確認すること。読み違えがあったり、ノイズが入っていたり、ハイライトの閉じ位置で音声が切れていなかったりで、後日再録音しなければならないのを防ぐためです。普通に読めば10分の文章の録音に1時間以上かけるつもりで。
ノイズにはいろいろな原因があります。サウンド編集でノイズカットもある程度可能ですが、録音時点でノイズレベルをできる限り低くするのが基本中の基本です。いわゆる録音室で録音すれば、生活音や室外の雑音、エアコンなどからのノイズはありませんが、蛍光灯はつけない、マイクは手に持たずにマイクスタンドを使う、パソコンとマイクスタンドはできる限り同じ机にのせない、コードはパソコンの上を通さない、アダプターはパソコンやマイクのそばに置かない、パソコンの冷却ファンの音やマウスのクリック音、ナレーターのリップノイズやブレスノイズ、口内音を取りこまないなどの注意が必要です。
このような注意をしても、マイクからのバックグラウンドノイズは防止できません。パソコン、特にノートパソコンはノイズの発生源というかノイズの固まりです。それに、登載されているサウンドボードもピンからキリまであります。ライン入力端子のあるデスクトップ型パソコンにしっかりしたサウンドボードを組み込んでいればノートパソコンよりはるかにましですが、ノートパソコンの場合は、USB接続型のサウンドボード(サウンドプロセッサー、オーディオキャプチャーなどとも呼ばれる)を付ける必要があります。これにもピンからキリまであります。ナレーションの編集は、ノイズを聞き逃さないよう、パソコンスピーカーの再生音ではなく、ヘッドフォンやイヤフォンを使って編集します。ただし、使用するヘッドフォンやイヤフォンがノイズキャンセリング機能をもっていないことを確認してください。
サウンド編集はアマチュアからプロ、マニアまでいろいろなレベルがあり、いつまでもノイズレベルや音質にこだわっていると肝心のDAISY図書がつくれません。サウンド編集ソフトでノイズ除去するなどある程度の妥協が必要です。
周囲からの環境ノイズは避けたとしても、マイクや録音機材からくるバックグラウンドノイズがある場合は、サウンド編集ソフトで除去することになります。といってもバックグラウンドノイズが高いと、サウンド編集で音質が変わってしまいます。サウンド編集ソフトにもプロからアマチュアレベルまでいろいろありますが、現在のところ、フリーソフトのAudacityが操作が簡単で音質の変化も少ないので使っています。
Audacityにはいろいろな機能があり、ネットには使い方の解説もたくさんあります。このメモはDAISY編集のためのノイズ除去と音量調整のためだけのものです。
◎あらかじめ音声ファイルのバックアップを必ずとっておいてください。 (間違えた場合の安全のため必須)
【ノイズ除去】
Audacityを立ち上げる
⇒メニューバー「ファイル」
⇒「開く」
⇒(ノイズ除去したい音声WAVファイルを選択)
⇒「開く」(波形が現れる)
⇒メニューバー「表示」
⇒「垂直方向に合わせる」(波形が垂直方向に拡大される)
⇒画面下部の時間設定ボタンの「長さ」を選択
選択範囲の時間長さが表示されるようになる。
⇒バックグラウンドノイズのある無音部の長い部分をマウスでドラッグして選択。
「長さ」が1秒以上あること。音声部分は決して含まれないように。
WAVファイルが長いと無音部が狭く表示されるので最初は適当に選択し、 ツールバーの虫眼鏡の「選択部分を合わせる」をクリックすると選択部分が拡大表示されるので正確に無音部を選択する。
Ctrl+1、Ctrl+2、Ctrl+3で波形時間軸の拡大縮小ができる。
時間の「長さ」で1秒以上あることを確認。
⇒メニューバー「エフェクト」
⇒「ノイズの除去」
⇒ステップ1 「ノイズプロファイルの取得」(ノイズの波形を記憶させる)
⇒再度波形が表示される。
⇒Ctrl+A で波形全体を選択する。
⇒メニューバー「エフェクト」
⇒「ノイズの除去」
⇒ステップ2 全体のノイズを除去する。
ダイアログ中の数値は初期設定のままでほぼOK(25、4.00、150、0.20)
⇒下部にある「OK」
長い録音の場合、ノイズ除去中の進捗状況はプログレスバーで表示される。
画面左上の一時停止・再生・停止ボタンなどで再生してノイズが除去されていること、音質が劣化していないことを確認。
もし、音声部分の背後にまだノイズが残っている場合はそのまま再度Ctrl+Aで全体を選択してステップ2を再実行する。
⇒メニューバー「ファイル」
⇒「書き出し」
⇒「保存」
ファイル名は変更せず上書き保存するのが簡単。
保存場所に注意!!開く場所と一致していない可能性あり!!
(上書きされないと保存されない!)
置き換えるかの警告がでる。
(オリジナルのファイルは必ずあらかじめコピーして保存しておくこと)
⇒「はい」
⇒メタデータを編集のダイアログが出るが書き込む必要なし。
⇒「OK」
⇒メニューバー「ファイル」
⇒「閉じる」
⇒「変更を保存しますか}
⇒「いいえ」
⇒新しい白画面が出て元に戻る。
⇒次のファイルを選択する。
⇒以下繰り返し
ノイズ除去に失敗した場合は保存したオリジナルWAVファイルで再試行する。
【音量の調整】
音量が小さい場合は、上のノイズ除去後に音量を拡大する。
⇒メニュー「エフェクト」
⇒「増幅」あるいは「正規化」
全体に均一な録音の場合は「正規化」:最適録音レベルに自動的に調整してくれる。(画面から出ない程度で高めのレベルに調整される)
一部に大きな強調音声(高音量)がある場合は「増幅」で調整。さもないと最大レベル以外のレベルが低いままになりがち。
Audacityは振幅の拡大ができないのでノイズレベルは耳で確認するしかありませんが、フリーソフトのSoundEngineFreeは振幅の拡大ができ操作は簡単ですのでノイズレベルの判定やファイルの分割・結合などにたいへん便利です。一応ノイズ除去もできます。
ノイズの除去は、SoundEngineFreeを立ち上げ、開くで音声ファイルを選択し⇒音量 ⇒ノイズゲート⇒ライブラリー⇒「薄く」あるいは「軽い」⇒OK⇒上書き保存
ノイズゲートのレベルはバックグラウンドノイズの大きさにより選択します。テスト結果では「標準」が一番弱く、「薄く」「軽い」「ノイズゲート」「強く」の順で除去が強く働き、「強く」では音質が変わり音声がとぎれてしまいます。マニュアル設定も可能です。
SoundEngineFreeはあくまでも音声の録音されていない部分のノイズを除去するだけで、音声と重なった部分のノイズは除去できません。したがって音声部分のノイズは残ってしまいます。この音声部分のノイズも除去するには無音部のバックグラウンドノイズを記憶させ、全体から削除できるAudacityがお薦めです。
通常、マルチメディアDAISYのナレーション録音は、ナレーターとパソコン操作者がペアーで録音室に入り、span(ハイライト)ごとに区切って録音していきます。こうすると、あとの編集が楽な場合が多いのが普通です。
ハイライトの長さ、すなわちspanの間隔は本によって、あるいは利用者によって異なります。句点(。)で切るだけなら問題ありませんが、読点(、)でも切る、あるいは、幼児用の絵本では、すべて「わかちがき」で切ることもしばしばです。音声編集のためにはハイライトの閉じ位置で言葉をはっきり切っていただかなければならないので、普通の朗読とはかなり異なり、ナレーターがとまどいます。
そこで、絵本のように1ページの文字数が多くない場合は、録音設定の「録音中フレーズ検知を使用する」のチェックを外して、1ページあるいは1文節を続けて読んでいただいて、あとでテキストとシンクロするように移動や切りとり-貼り付けで編集することもできます。この方法なら、span区切り位置をはっきりさせて読んでいただきさえすれば、不自然なところで読みを中断する必要がないのでナレーターは読みやすく、間の取り方も自然になります。また、マウスからの雑音もほとんどなくなり、結局、編集が簡単になります。
ただし、ハイライトを見ながら録音しないので、句読点あるいは分かち書き単位で区切るという原則に従わない場合には、どこでハイライトを区切っているか記入されているテキストが必要です。
ナレーターが自分のペースで朗読し、自分で録音できれば、ストレスは少なくなります。ところが、ご自分でパソコンを操作しながら録音していただけるナレーターは多くありません。そこで、ICレコーダーでデジタル録音していただき、パソコンとICレコーダーを接続して、音声インポートで取り込む方法があります。ICレコーダーの操作は簡単ですので1人で録音していただけますし、パソコンから発生するノイズの心配もありません。ICレコーダーの機種によっては、変換ソフトによる音声ファイルの変換が必要ですが、最近は、ON-OFFリモコンや三脚がつけられ、SigtunaにインポートできるPCM形式の高音質ICレコーダーがふえています。
オリンパスLS-7という一般的なレベルのリニアPCMレコーダーでテストしてみました。この機種で非圧縮(PCM)録音すればそのままSigtunaにインポートできます。操作はきわめて簡単で三脚やワイヤレスリモコンもつけられます。
ただし、わずかにバックグラウンドノイズがあり録音音声はICレコーダーにありがちなシャリシャリ系ですが、SoundEngineFreeによる音質と音量(ノイズ)編集で自然な音質にできます。
ICレコーダーにダイナミックマイクを外付けすると、音質はソフトになりノイズレベルも下がります。
Sigtunaにインポートする場合は、「録音設定で」サンプリング周波数をICレコーダーの録音条件と同じに設定し「編集画面」でインポートする場所を選択しフレーズ感知を使用しないよう設定して適当な個所に「インポート」します。あとはフレーズを分割しながら該当個所に移動させます。ナレーターへの負担は少なく、ナレーションも自然になるようです。
ICレコーダーによる録音の場合は、少なくとも1ページ毎、あるいはより短い長さにファイルを分割して録音します。さもないとインポートされた音声ファイルの波形が密になりすぎてファイル分割が困難になります。
1)マイクロフォン:SONY/FV-820およびSONY/FV-620、SONY/ECM-330
2)オーディオインターフェース:オンキヨー/SE-U33GXY(B) 2台
これらは平成22年度のグリーンコープ福祉活動支援基金の助成により購入しました。
ICTメンバーの一人は、サウンドプロセッサー:Roland UA4FXを使っていますが、ノイズレベルをかなり低くできるすぐれものです。マイクロフォン付きヘッドホンで録音できれば便利ですが、音質、感度、ノイズレベル、そして価格などの条件に合うものはなかなか見当たりません。プラントニクス社のヘッドセットC320がかなり条件を満たしています。
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